咲坂の指名は、翌週の金曜日だった。
指定された部屋のドアをノックすると、彼は、前回と変わらない優しい表情で迎えてくれたけれど、涼子にはいつもよりぎこちなく感じられた。
それは、ほんとうに小さなちがいで、そんなことに気付いてしまった自分に、涼子はおどろいてしまう。
それでも彼の顔を見ると、自分はこの人に会いたかったのだ、と思った。
他の客とはちがう、不思議な雰囲気をまとったこの若い男に。
なぜだかはわからないけれど。
「おひさしぶりです」
自分でもよくわからないこの感情を悟られないように注意しながら、でも今までよりはすこしやさしくきこえるように、涼子は言った。
そんな涼子を知ってか知らずか、咲坂は、
「ほんとうにひさしぶりだね」
とこたえ、とても自然な動作で、涼子をベッドルームに誘う。
こういうところが、他の客とちがうのだと、涼子はまた思う。
その一方、でも、とも思う。
でも、この人も客なのだ、と。
私はここに仕事をしにきているのだ、と、かなしくもそう考える自分がいることだけは、涼子ははっきりと自覚していた。
服を脱ぎ、下着に手をかける。
ベッドに腰かけ見つめた咲坂の顔は、どうぞ、はじめて、とやさしく言っていた。
ベッドに上がると、すこしはなれたところにある椅子に腰かける咲坂に向かいあう形で座った。
指を唾液で濡らし、胸に持っていくと、頂きはすでに固くなっていた。
丹念に擦り、二本の指でそれを摘むと、涼子は、ふう、と、息を漏らす。体中に咲坂の視線を浴びながら、右手は徐々に下へ降りていった。
細く長い指が、熱い体の中心へ到達すると、はやくもそこはたっぷりと潤っていた。くちゅっと音をたて、指を滑らせる。中指はそのまま吸い込まれそうだったが、涼子はその湿った指をわずかに上に沿わせ、クリトリスを剥いた。
「んっ……」
思わず声が漏れる。自分の指が今まで感じたことのないほど新鮮に感じられ、それはきっと咲坂が見ているせいなのだと、すでに思考能力の低下している頭でぼんやりと思う。
視線だけでこんな風になる体を、涼子は今まで厭っていた。触られても何も感じないくせに、見られると興奮する。それを仕事にしておきながら、触られて感じる体になれればどんなにいいだろう、と思っている自分がいた。
だが、どうしてだか、今はちがった。この視線で感じる体を、うれしく思った。それは不思議な感覚で、涼子は仕事をしていることを、はじめて忘れそうになっていた。
木製のヘッドボードに背中をあずけ、右手でクリトリスを捏ねながら、左手を胸から右手のほうへ移動する。そのままその指を中に挿しこむと、おかしくなったように中を掻き回した。ひざを曲げ開脚した両足は、いつのまにか力なく投げ出されていて、一本では足りず、さらに二本を追加した涼子の中からは、大量の蜜が溢れ、シーツを濡らしてた。
「リョウ、目を開けて、僕を見て」
いつもは声をかけない咲坂にそう言われて、はじめて、涼子は自分が固くまぶたを閉じていることに気付いた。ゆっくりと開けると、涼子の視線は咲坂に絡めとられてしまった。
「そう。そのまま、続けて」
その眼差しはとても真摯で、涼子は胸が痛くなった。
どうして、そんな顔をしているの。そう問いたくなるようなかなしい光が、そこには宿っていた。
視線に射抜かれながら、涼子は二度、達した。